第三話 明朝体

 おそらく日本で最も有名な書体「明朝体」。印刷にそれほど馴染みのない方でもWordについてくる「MS明朝」はご存知のことと思います。「みんちょうたい」と読むこの書体、もちろん「明日の朝」という意味ではなく、京都萬福寺の住職鉄眼禅師が1681年に彫り上げた明朝体の原型と言われる「鉄眼版一切経」が、明の国の経典の復刻版だったところから、そう呼ばれるようになったようです。ちなみにこの「鉄眼版一切経」は20字×20行で彫られており、現代の原稿用紙はこれに倣ったものとも言われています。

 明治以降最もポピュラーな活字書体として普及していった明朝体ですが、「鉄眼版一切経」が隷書で書かれた経典を元にしていたことや、明治期に輸入された活字が中国の漢字辞典である「康熙字典」を参照していたことなどから、当時の日本人が一般的に書いていた筆記体(楷書体)と字体・字形が異なるという問題が発生しました。この字体・字形問題についてはぜひ前号をご覧ください。

 日本には数多のフォントメーカーがあり、明朝体も各社各様、微妙な違いとはいえ実に多くのデザインがあります。最近Windowsで初期設定されている「游明朝」は可読性が高く、数字やアルファベットのバランスも良く〝神フォント〟の異名をとるほど評判です。時代と共にフォントにも流行があり、数年前まで文字が大きく見える「小塚明朝」などがよく使われましたが、最近では大日本印刷の前身である秀英舎が開発した「秀英明朝」などレトロな雰囲気のデザインが注目の的。モリサワの「A1明朝」のように「にじみ」によってレトロ感を演出するフォントも登場するなどまさに百花繚乱です。あなたもお気に入りの明朝体を見つけてみてはいかがですか。

この投稿は役に立ちましたか?
送信
0人の方がこの投稿は役に立ったと言っています。

あなたの知らないふぉんとのはなしの最新記事8件

NO IMAGE

紙ファイルでSDGs 「脱プラスチックで海を守るファイル。」

レジ袋が有料になったり、ストローが紙製になったりと、SDGsの取り組みとしてかなり身近になってきた”脱プラスチック”。でも企業で取り組もうと思うと、変えられるものってそんなにないなあ…と思っていませんか。
会社でも”脱プラスチック”したい!という声にお応えして、オリジナル商品「紙製クリアファイル」を開発しました。仕事中に使うプラスチック製品としては、最も使用頻度が高いもののひとつ「クリアファイル」を”脱プラスチック”してみませんか。

CTR IMG