社会の〝第三極〟市民セクターをもっと大胆にダイナミックに

  • 2020年4月30日
  • 2020年12月4日
  • JO対談

認定NPO法人市民セクターよこはま  事務局長 吉原明香さん

江森:新しい市庁舎のオープンに伴って、ということなのかどうかのかはわかりませんが、市民活動支援センターは今年の2月で終了ということになりました。このセンターもずいぶん長かったですよね。

吉原:私たち市民セクターよこはまが横浜市と協働協定書を締結して運営を担いはじめてから11年、その前は運営委員会、さらにその前にはボランティア協会が運営していました。2000年10月にセンターが開設していますので、約20年ということになります。

江森:2000年ですか、NPO法成立が1998年ですから、やはり当時は市民活動を行政として後押しすることが求められた時代だったということですね。

吉原:そうですね。法律ができたきっかけと言われているのが1995年に起こった阪神淡路大震災で、この年はボランティア元年とも言われていますが、非営利の活動に法的な根拠を持たせるのと同時に、行政としても市民活動を支援しなければならないということで、当時は全国に支援センターができていましたね。

江森:そこで吉原さんたちが市民活動支援を担うわけですが、市民セクターよこはまはどういう経緯で作られたのですか。

吉原:私は以前横浜市社協の職員で、当時あいあい基金(現在はふれあい助成金)の担当をしていました。引き継いだときは約270団体、翌年は400団体に助成していました。申請書だけ見て、現場をみないと事務局の役目を果たせないので、目を養う意味もあって、いくつかの団体に直接伺っていたのです。そのとき訪問した先々で本当に素晴らしい活動をされている方々との出会いがあって、その方たちにとんでもない可能性を感じたんですね。というのは、基金の担当になる前に地域ケアプラザで介護の仕事をしていて、そこに来ていたおばあちゃんが入院したときにお見舞いにいったことがあったんです。認知症末期の方々が多く入院する昔で言う老人病院なんですが、そこで入院している方全員がぽかんと口をあけて目を見開いて寝かされている光景を目の当たりにしました。ひとりとして声も出さないし寝返りも打たない。それがそのフロア10室ぐらい全部そうなんです。しかもそのフロアのナースステーションに看護師さん1人しかいない。なんなんだこれはと思って、後日知り合いの看護師さんにきいたら、それは薬でおとなしくさせられていて、ふとんをめくったらきっと手も足も拘束されてるよって教えてくれたんですね。ちょうど沖縄でひめゆり学徒隊の話を聞く機会があって、当時回復の見込みがない兵隊さんは見捨てざるを得なかったという話を聞いてきたばかりだったので、いま私たちはこんなに平和を謳歌しているけど、人の命の扱い方は戦時中と何も変わってないじゃないかって、すごいショックを受けたんです。

 その後異動になって、素晴らしい市民活動をしている方々に出会ったものですから、まさに光が見えたんですね。これからの社会をどうデザインしていったらいいのか、どうしたらひとり一人が自分らしく暮らせる社会になるのかという問いに対する答えは、市民活動をしている方々が持っていると思ったんです。

江森:でも当時はまだまだ市民活動団体が行政と対等に話ができるような状況ではなかったのではないですか。

吉原:そうなんです。ですから市民活動団体の声がもっと表舞台に出てくるようにしようと、健康福祉局とも相談して「市民セクター構築のための研究会」を立ち上げました。「市民セクター構築」というのは、アリスセンターの初代理事長でいらっしゃる緒形昭義さんの言葉なんですが、研究会立ち上げの呼びかけ文をどう書いたらいいか迷っているときに、この緒形さんの言葉がすーっと降りてきて、そうだ行政と対等に議論ができる〝第三極〟を作るんだと確信できたんですね。研究会を1年やったあと、自分たちでやっていこうと1999年に設立されたのが〈市民セクターよこはま〉なんです。

江森:いやあ、思いに圧倒されますね。法律が整備されたということもあるのでしょうけど、当時社会的にもなかなか認めてもらえない中で活動されていた市民活動団体の方々の熱意が伝わってくるようです。

吉原:それまでは公的サービスというのはすべて行政が担っていて、保育園にしても特養にしても、自分の好きなところを選ぶなんてできない時代でした。それが、自分の好きなところを選べるのはもちろん、やる気さえあれば自分が公的サービスの担い手にもなれるなんて、本当にそんな時代が来るの?って信じられない気持ちでした。でも3、4年経ってから立ち上げのときのビジョンを見てみたら、現実がビジョンを追い越してましたね。それぐらいエネルギーが溢れていました。

江森:次は「市民協働推進センター」の運営を担うとのことですが、これまでとはどう違うのでしょうか。

吉原:今までの市民活動支援センターは公設民営とはいえ、比較的自由にやらせてもらっていたので、横浜市の施設ではあるけれども、民に軸足をおくことが奇跡的にできていたんです。でも今度は、公設公民営といって、行政職員と私たちが机を並べて仕事をするようになるんですね。話し合いの過程で一時はすごく揉めました。行政の施設を民間の感覚を活かしながら運営するからこそバランスがとれるんであって、そうでないなら私たちがやる意味はないと議論を重ねました。一方行政からは、より協働の相乗効果が得られる距離感について話があり、わたしたちもそれを理解し、一緒にやりましょうということになったんです。

江森:「協働」という言葉が一般的になってくるにつけ、対等の立場で協働するけど、やっぱり自分たちがコントロールしたいという行政の思惑が見えるときもありますよね。行政の下請けになるのではなく、当事者である民間のスタンスをキープしつつ、行政の立場も理解しながら、うまく協働していくことが民間側にも求められていると思います。

吉原:だからというわけでもありませんが、今回協働推進センターの事業とは別に、民間の支援センターを新市役所のすぐ近くに立ち上げることにしました。協働推進センターと支援センターを行き来することで、また新しい協働が生まれたらいいなと思っています。

江森:市民活動支援センターの広報誌「animato」の最終号で、早稲田大学の石田光規教授が、これまで人類は「ひとりになる自由」を求めて社会を発展させてきたけれど、それは同時に孤独・孤立の不安を生み出すことでもあったというお話をされていてすごく共感しました。ちょうどいま新型コロナウイルスが猛威をふるっていますが、これだけ世界中に感染が広がるのはグローバル化の負の側面でもありますし、世の中の現象って常に表裏一体で、それが振り子のように振れることで私たちの生活にいろいろな影響が出てくる。その影響を緩和してくれるのが市民活動なのではないかと思っています。

吉原:学校が休みになるということで、こども食堂やミニ学童のような取り組みが全国で立ち上がっていますよね。そこに共同募金が10万円を補助するという取り組みをいち早く始めて、2月下旬には募集が出ていたようですが、こういうところは民の力ですよね。すぐに立ち上がった人たちもすごいし、それに反応して素早く応援することを決めた共同募金もすごい。今回の新型コロナでも、3・11のときもそうでしたけど、なんとかショックと言われるようなことが起きたときに、まさに江森さんがおっしゃったように緩衝材になっているのが市民活動だと思いますね。

江森:ようやくそういう社会になってきたということでしょうか。

吉原:昔からずっとそうやってきたんだと思うんですよ。江戸時代だって飢饉があって孤児になってしまった子を村で育てようとかね。それを時代にあわせてやっていくということなんだと思います。どうしても制度というのは副作用を伴うので、制度外の支援というのが追いかけっこのように常に必要になるということですね。

江森:市民活動に終わりはないということですね。

吉原:それでも、20数年前に見た老人病院の光景というのは、100%ではないにしても改善されていますし、いろいろと歪みを生みながらも介護保険になったことで、介護される側もする側も楽になったというのは間違いありませんので、そういう意味ではいわゆる成熟社会の方向に向かって進んではいると思います。

江森:場所も名称も新しくなってこれからどのように活動されていきますか。

吉原:もっと大胆にダイナミックに考え、行動していきたいですね。普段物事を俯瞰して見ているつもりでも、どうしてもいまいるところから考えてしまいますよね。でもそれでは社会は変わらないと最近思うことがありまして…。今までよりもっと大きく社会を見られる立ち位置が与えられたと思っていますので、それを活かしていきたいですね。

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