「コンテンツ版バイ・ドール契約」とは?
知的財産を有効活用するための新たな契約形態に注目

 印刷会社は、日頃の業務で、写真、イラスト、テキスト、グラフィックデザインなど多くの著作物(著作権)を取り扱います。官公需においては、著作権に関するトラブルを未然に防ぐという観点から、仕様書や契約書に「著作権等の一切の権利は委託者に帰属する」等の一文が挿入され、著作権が強制的に無償譲渡されることが一般的になっていますが、これは著作権法の精神に鑑みても望ましくないことは明らかであり、ここ数年国と業界団体によって是正の取り組みがなされてきました。

 官公需取引における著作権の適切な取り扱いについて、平成 29 年7月 25 日の閣議で決定された「平成 29 年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」(以下、基本方針)で新たに講ずる主な措置として、「知的財産権の財産的価値について十分に留意した契約内容とするように努めるものとする」が加わりました。そこからさらに踏み込んだ措置として、令和2年度版では「コンテンツ版バイ・ドール契約の活用を推進するよう努める」との文言が加わりました。

 「バイ・ドール契約」とは、著作権等の知的財産権を発注者ではなく、受託者に帰属させることで二次利用しやすくし、二次的、三次的な経済効果を期待する契約形態で、欧米では一般的ですが、日本でもゲノム研究等国と民間の研究機関との共同研究等では、バイ・ドール契約が採用され、研究結果の知見を広く民間で活用できるように工夫されています。「コンテンツ版バイ・ドール契約」とは、文字通りバイ・ドール契約をコンテンツ分野に適用したもので、経済産業省が旗振り役となって普及に取り組んでいます。

 今回の基本方針では、<(前略)契約にあたって、調達コストの適正化や著作物の二次的活用を図る観点から、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律(平成16年法律第81号)第2条第1項のコンテンツに該当し、著作権等の知的財産権の発生が含まれる場合には、発注者は当該知的財産権の全部又は一部を譲り受けず受注者に帰属させるコンテンツ版バイ・ドール契約の活用を促進するよう努めるものとする。>として、知的財産権を発注者に譲渡しない契約をするように求めています。

 いまだ地方自治体においては、上記基本方針の趣旨が十分に理解されていないこともあり「コンテンツ版バイ・ドール契約」の採用は進んでいませんが、今後我が国がアニメや漫画といったコンテンツビジネスで世界に進出していくためにも、イラストや写真、グラフィックデザインといった著作物の権利を正当に保護し、社会全体でその価値を認め、育てていくことが求められます。

日本版バイ・ドール制度

全日本印刷産業政治連盟広報紙より

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