社会が求めていることをビジネスで解決してこそ企業人

  • 2014年1月1日
  • 2020年12月25日
  • JO対談

株式会社協進印刷 代表取締役 江森克治

新年あけましておめでとうございます。本年もJOともども協進印刷をどうぞよろしくお願い致します。前号に引き続き栗栖良依さんとのクロス対談をお届けしますが、今回は弊社代表の江森克治が栗栖さんの質問に答えます。

栗栖:協進印刷さんは、すごくCSRの取り組みをされていると思うのですが、何かきっかけがあったのですか。

江森:CSRそのものということでいえば、現在の横浜型地域貢献企業認定制度の元になった二〇〇五年の横浜青年会議所での活動ということになりますが、「目覚めた」という意味でいうと二〇〇八年に経済産業省が主催したパリでの展覧会「kansei  japan design exhibition」に出展したことによって、「感性」が実はモノづくりにおいてもCSRにおいても、その根底に同じように流れているということに気付いたことですね。

 それまではCSRというのは企業も社会にいいことして本業もがんばりましょうということ、感性のモノづくりというのは製品に付加価値つけましょうということ、というように自分の中では両者はまったくの別物だったわけです。しかし両者に通じる本質の部分が、実は次の時代の社会や企業に求められていることそのものであるとわかったときは、なんというか衝撃的でした。

栗栖:それはおもしろいというか、なかなか気付かない視点ですね。

江森:それこそ栗栖さんも言われるように、マスプロダクションの限界というか、心の問題を何とかして欲しいというニーズがありながら、そこに企業が応えられていないという現状があるわけです。そこに応えるための手段としてCSRがあったり、感性のモノづくりがあったりするだけで、両者は単なる手法の違いでしかないということです。

栗栖:それは大きなヒントですね。CSRって「やらなきゃいけない」っていう雰囲気があるので、どの企業も仕方なくというか一応ホームページにCSRのページがあるみたいなところがありますよね(笑)。それも理詰めでガチガチにやってしまっているので、どうも心が入っていないと感じることが多いですけど、いまの「感性」という視点はすごく大事なポイントのように思います。

江森:そうなんですよ、理詰めでやっちゃいけないんですよ、CSRは。いいと思ったらやればいいし、楽しいと思ったらやればいい、本質的にはそういうことなんです。でも組織が大きいと「君はCSRの担当だ!」とかいうことになって、通常の仕事と同じように予算がつけられて成果を求められるわけです。でも当の本人に問題意識がなければいい取り組みなんてできるわけがない。そうやっておかしなCSRになっていくんですよね。

栗栖:それはまさにマスプロダクション型企業の弊害ということでしょうか。

江森:その通りです。でもそれじゃダメで、そこをなんとかして次の時代に向かっていかなければならない。それにはまず企業が変わらなければ。組織の仕組みや、意思決定の仕組みや、仕事の仕方やそういうことを次の時代にあわせて変えていって、他人を蹴落とさなくてもみんなで幸せになれる社会を実現しなければなりませんよね。

栗栖:スローレーベルやランデヴープロジェクトなどで、アーティストなどある意味わがままな人たちとも嫌な顔せずにお付き合いしてくださっていますが(笑)、異文化の人たちと一緒にお仕事されて何かいいことはありますか。

江森:いいことというより、そういうことの中から新しいビジネスが生み出せないのだったら我々の存在している意味なんてないと思うんですよ。我々はビジネスの専門家なのであって、クリエイターとかアーティストのみなさんが生み出した可能性のある素材を組み合わせて、いかに新しいビジネスを作っていくかということが使命ですから、それができないんだったら企業人なんていなくていいです。

栗栖:それは二重線をつけて書いておいてください(笑)。

江森:いまこういうことを言うと奇抜なようですけど、昔の人だって同じことをしてきたんだと思うんです。例えば江戸時代から明治時代に変わったとき、これまでとまったく違う資本主義というのが入って来て欧米式の経済システムを取り入れたわけですよね。でも最初は当然反発があったと思うんですよ。でも渋沢栄一さんや岩崎弥太郎さんという方々が、これをやらねば!と信じて引っ張っていったから成長できたわけですよね。だから今もうひとつ次の時代に移るこの大事なときに、現代の経済人が次の時代の経済のカタチを作っていく、そういう使命があると思っています。

栗栖:インターンなども積極的にされていますが、いまの若者と一緒に活動してみて、何か感じることはありますか。

江森:いまの若者は素晴らしいですよ。

栗栖:一般的には否定的に語られることが多いですよね。夢がないとか…。

江森:いわゆる昔風の「豪邸に住んで高級車に乗って」的な夢はなくても、若い人なりの夢というか理想はちゃんと持っていると感じますね。

栗栖:そうですよね、でも、そういう若者を生かしきれない企業って多いと思うのです。若者を生かすコツみたいなもの、彼らと接してみて気付いたことはありますか。

江森:それは難しいですねえ…。結局従来の組織の中で、従来の管理の仕組みで、従来の業務に従事させたら彼らは生きないですよね。だって右肩上がりの時代を生きたおじさんたちが作った仕組みですから。

 階層構造の組織に対して「ネットワーク型」の組織というのが最近注目されています。NPOなどはネットワーク型の典型で、組織の目的達成のために誰かに命令されるのではなく、自発的に自らのリソースを提供して連携していくスタイルのことです。そういう自発的あるいは創発的な組織の仕組みを企業にも取り入れていくべきでしょうね。従来のように部長が課長に命令して、課長が係長に命令して…みたいなことだと、若者がもっている創造力が生かせません。次の時代の感性をもっているのは次の時代を生きる若者ですから、彼らの感性をビジネスにどう取り入れるかということが、企業にとっては死活問題になってくると思います。

栗栖:ネットワーク型というキーワードが出てきましたが、時代が進むにつれて、とかく紙よりデジタルという風潮がある中で、協進印刷さんが持っている「紙」という媒体が担えるもの、「紙」だからこそできることがたくさんあると思うのですが。

江森:情報って、こうやって会ってお話するのが一番多くの情報を伝えられますよね。言葉だけでなく、表情とか、声とか、仕草とかも含めて。それに比べて電子メールなんてホントに最小限の情報しか伝えられません。それを補うために顔文字など使うわけですが、ネット社会になって実は捨てられてる情報って結構あると思うのです。そう考えると紙媒体が伝えられる情報というのは意外とたくさんあるんですよ。

栗栖:紙媒体が「伝えられる」理由はどんなところだと思いますか。

江森:それはブツがあるということ、紙の質感であったりカタチであったりということももちろんありますが、一番の理由は、そこに伝えるための工夫があるということ。つまりコピーライターだったり、アートディレクターだったり、様々な専門職の人たちが、すでにあるコンテンツをいかに伝わりやすくするかということを一生懸命考えて作っているということだと思います。

 そんな専門家たちの「業界」が、近代印刷産業が始まって以来百五十年ぐらい続いて来ているというのが、印刷やグラフィックに関わる私たちの強みだと思っています。

栗栖:そうですね、これはウチのブランドっぽいとか、これは違うとか、発信するときにかなり考えますよね。そこは言われて改めて気付くことですね。

 最後に、協進印刷さんがこれから三年から五年ぐらいの間で、新しい社会の実現に向けて力を入れていきたいことはどのようなことですか。

江森:それは新しい社会を創造する場に企業を引っ張り出してくることですね。従来の社会の仕組みの中では解決できない社会課題を何とかしようと頑張っている人はたくさんいるのですが、それぞれに困っていることがあります。その多くはお金がなくて困っているのですが、そこにビジネスマネーを引き込むということを中心にやっていきたいと思っています。時代は確実に「感性の時代」に移行すると考えているので、ゆくゆくはそれがあたり前になると思いますが、今のところはまだまだ企業はマスプロダクションの世界で動いていますので、NPOの支援などは企業の論理にあわないことが多いのです。だから企業の論理に合う、いわゆる「通りやすい」話に翻訳してあげる作業が必要です。社会課題と企業の間をとりもつ翻訳家の役割を担えればと思っています。

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